ハムバッカーのノイズだけ除去できる意味がよく分からない、という話。
2019年8月9日 日常世の中にはエレキギターとかエレキベースとかいう楽器がある。
時期としては第二次世界大戦の終戦に前後して誕生し、古くはフェンダー社からテレキャスターが、ついでストラトキャスターが産まれ、それを追ってプレシジョンベースやジャズベースなどが産み出された。
そのライバルとなったギブソン社でもエレキ楽器が開発され、レスポールやSGなどのシリーズがロングセラーとなる。
タイトルについているハムバッカーはこのギブソン社が開発したピックアップの名前である。
エレキベースやエレキギターにはマイクがついていない代わりにピックアップと呼ばれる磁石にコイルを巻きつけた装置がついている。
普通、日常的に使用されるマイクといえば音波を電気信号に変換する装置のことだが、ピックアップは弦の振動を電気信号に変換するという点でマイクとはことなる。
楽器の鳴り、ボディの振動そのものを電気信号に変換する装置もあり、これはピエゾピックアップと呼ばれる分類がある。
ハムバッカーはピックアップの一種で、より具体的には『コイルを巻く向きと磁石のN極の向きを逆にした二つのピックアップを接続したもの』といえる。
世に数多あるハムバッカーの説明ではおおむね次のような紹介がなされる。
ハムバッカーのメリットは信号に対するノイズの成分を減らすことができる。デメリットとしては高音成分の輪郭があいまいになる。ノイズの信号は逆位相の波形として受発信するので打ち消し合い、弦の信号は強め合うので二倍になる。(実際には物理的距離の問題などで二倍になることはないし、ノイズも完ぺきな形で打ち消すことはほとんどない)
という趣意だ。
まぁ、ぱっと目につくwebサイトではどれも似たような説明と図示がされていて分かったような分からないような気にさせられるのだが、ここで一つ疑問がわく。
どうやってノイズだけを選択的に除去してるの?という疑問だ。
弦振動とノイズ、どっちも磁界の変化を電気信号に変換しているという意味では同じの様に思える。
ピックアップの信号は中学の時に習ったレンツの法則なり誘導電流なりで発生していると考えれば理解に容易いのだが、弦の振動として送られる信号とその他の雑多なノイズとして送られる信号にはどのような違いがあるのか、そういったサイトを見て回っても明示されていなかった。
ノイズの要因はいろいろな原因があるが、(例えば照明や電化製品から発生する)電磁波が空間中を漂っていて、それをピックアップが拾ってしまうから完全に遮断する方法は恐らくほとんどないというような記述が目立つ。
だがしかし、やはりというかこれだけではどっちがどう違うのかは分からなかった。
何故、何故、なんで、というキモチを抱えモヤモヤしたままネットサーフィンをしていると、ようやく一つ核心らしい記述を見つけた。
”弦の信号の位相は「磁石の向き」と「コイルの巻きの向き」の両方に関係してくるが、ノイズは「コイルの巻きの向き」は関係してくるが、「磁石の向き」は関係がない。”
というものだ。
なるほど!確かにそれなら事前の説明の通りになるが・・・・・・いや、なんでだ?ノイズだけは磁界の向きがどうして関係ないってことになるんだ?どっちも磁界の変化でコイルに流れる電流の向きを信号にしてるんじゃないのか?
のどに小骨がひっかかったようなモヤモヤ感があった。
ここさえ乗り越えればハムバッカーの原理に納得できるところまできているのだが、そのあと一歩を突き詰めて書いている記述は残念ながら見当たらなかった。
こういう場合は3通りくらいに分けられる。
1.単に書き忘れた/文字数や根気の関係で書く気がなかった場合
2.既に前提として提示したものから当然に説明できる/敷衍して説明できる場合
3.素人読者に理解できない程、難解な事象に踏み込むため書かなかった場合
まず3は専門家がかみ砕いて説明しているようなサイトにも載っていなかったので、説明しきれるかはともかく論理背景として触れておくのも怠るということは考えにくいので除外していいだろう。
1については否定しにくいし、いくつかはこれが理由になっていたかもしれないがが、そろいもそろってものぐさが理由で書かないというのもやはり考えにくい。
ならばあとは2だろう。というか自分にできそうなことと言えばこれくらいで、基礎理論に立ち戻って考えれば何かつかめてくるかも知れないと思ってうんうん唸っていた。
そしたらある時ハタと電流が走った。
問題の鍵は弦が強磁性体であることだった。およそ市販されているエレキ楽器の弦は鉄芯にニッケルを巻き付けたものだったり鉄線そのものだったりする。これがピックアップの磁石によって生じる磁界中で振動することによって音が発生する。
で、これはピックアップに積まれた磁石の極性の影響を受けてるのだ。
ピックアップだけで物事を考えているとすっかり忘れていたことだった。
フレットを押さえて弦を弾くと、基音の振動は腹が一個の波になる。現実には倍音振動とかも発生するが、あくまでメインの信号はそうやって作り出される。そう考えると、それぞれのピックアップの上で同時に同じ方向にたわんでいることになる。ピックアップが少し離れた場所にあったとしても、ポールピースの向きが逆ならそれぞれのピックアップで受け取る信号の位相は逆になるのである。
一方でノイズの元となる電磁波は、これらのピックアップによって生じる磁界とは独立な発生源から放射されたものであり、他の要因を考えないならば、それぞれのピックアップで受け取ったノイズの電磁波はフロントとリアのピックアップについている巻きの向きが違うそれぞれのコイルにたいして逆向きに誘導電流を生じさせる。
つまりはこういうことだったらしい。
マクスウェル方程式だのまで引っ張り出す必要がなくてホッとしたが、どうも原理とか結果だけ説明されて、分かった気になっても実際の物理現象として何が起こってるかまできちんと想像できるようにしておかないと、このようなふとした疑問からドツボにはまることが多くて大変なのだ。
もう少し利口になりたいものである。
時期としては第二次世界大戦の終戦に前後して誕生し、古くはフェンダー社からテレキャスターが、ついでストラトキャスターが産まれ、それを追ってプレシジョンベースやジャズベースなどが産み出された。
そのライバルとなったギブソン社でもエレキ楽器が開発され、レスポールやSGなどのシリーズがロングセラーとなる。
タイトルについているハムバッカーはこのギブソン社が開発したピックアップの名前である。
エレキベースやエレキギターにはマイクがついていない代わりにピックアップと呼ばれる磁石にコイルを巻きつけた装置がついている。
普通、日常的に使用されるマイクといえば音波を電気信号に変換する装置のことだが、ピックアップは弦の振動を電気信号に変換するという点でマイクとはことなる。
楽器の鳴り、ボディの振動そのものを電気信号に変換する装置もあり、これはピエゾピックアップと呼ばれる分類がある。
ハムバッカーはピックアップの一種で、より具体的には『コイルを巻く向きと磁石のN極の向きを逆にした二つのピックアップを接続したもの』といえる。
世に数多あるハムバッカーの説明ではおおむね次のような紹介がなされる。
ハムバッカーのメリットは信号に対するノイズの成分を減らすことができる。デメリットとしては高音成分の輪郭があいまいになる。ノイズの信号は逆位相の波形として受発信するので打ち消し合い、弦の信号は強め合うので二倍になる。(実際には物理的距離の問題などで二倍になることはないし、ノイズも完ぺきな形で打ち消すことはほとんどない)
という趣意だ。
まぁ、ぱっと目につくwebサイトではどれも似たような説明と図示がされていて分かったような分からないような気にさせられるのだが、ここで一つ疑問がわく。
どうやってノイズだけを選択的に除去してるの?という疑問だ。
弦振動とノイズ、どっちも磁界の変化を電気信号に変換しているという意味では同じの様に思える。
ピックアップの信号は中学の時に習ったレンツの法則なり誘導電流なりで発生していると考えれば理解に容易いのだが、弦の振動として送られる信号とその他の雑多なノイズとして送られる信号にはどのような違いがあるのか、そういったサイトを見て回っても明示されていなかった。
ノイズの要因はいろいろな原因があるが、(例えば照明や電化製品から発生する)電磁波が空間中を漂っていて、それをピックアップが拾ってしまうから完全に遮断する方法は恐らくほとんどないというような記述が目立つ。
だがしかし、やはりというかこれだけではどっちがどう違うのかは分からなかった。
何故、何故、なんで、というキモチを抱えモヤモヤしたままネットサーフィンをしていると、ようやく一つ核心らしい記述を見つけた。
”弦の信号の位相は「磁石の向き」と「コイルの巻きの向き」の両方に関係してくるが、ノイズは「コイルの巻きの向き」は関係してくるが、「磁石の向き」は関係がない。”
というものだ。
なるほど!確かにそれなら事前の説明の通りになるが・・・・・・いや、なんでだ?ノイズだけは磁界の向きがどうして関係ないってことになるんだ?どっちも磁界の変化でコイルに流れる電流の向きを信号にしてるんじゃないのか?
のどに小骨がひっかかったようなモヤモヤ感があった。
ここさえ乗り越えればハムバッカーの原理に納得できるところまできているのだが、そのあと一歩を突き詰めて書いている記述は残念ながら見当たらなかった。
こういう場合は3通りくらいに分けられる。
1.単に書き忘れた/文字数や根気の関係で書く気がなかった場合
2.既に前提として提示したものから当然に説明できる/敷衍して説明できる場合
3.素人読者に理解できない程、難解な事象に踏み込むため書かなかった場合
まず3は専門家がかみ砕いて説明しているようなサイトにも載っていなかったので、説明しきれるかはともかく論理背景として触れておくのも怠るということは考えにくいので除外していいだろう。
1については否定しにくいし、いくつかはこれが理由になっていたかもしれないがが、そろいもそろってものぐさが理由で書かないというのもやはり考えにくい。
ならばあとは2だろう。というか自分にできそうなことと言えばこれくらいで、基礎理論に立ち戻って考えれば何かつかめてくるかも知れないと思ってうんうん唸っていた。
そしたらある時ハタと電流が走った。
問題の鍵は弦が強磁性体であることだった。およそ市販されているエレキ楽器の弦は鉄芯にニッケルを巻き付けたものだったり鉄線そのものだったりする。これがピックアップの磁石によって生じる磁界中で振動することによって音が発生する。
で、これはピックアップに積まれた磁石の極性の影響を受けてるのだ。
ピックアップだけで物事を考えているとすっかり忘れていたことだった。
フレットを押さえて弦を弾くと、基音の振動は腹が一個の波になる。現実には倍音振動とかも発生するが、あくまでメインの信号はそうやって作り出される。そう考えると、それぞれのピックアップの上で同時に同じ方向にたわんでいることになる。ピックアップが少し離れた場所にあったとしても、ポールピースの向きが逆ならそれぞれのピックアップで受け取る信号の位相は逆になるのである。
一方でノイズの元となる電磁波は、これらのピックアップによって生じる磁界とは独立な発生源から放射されたものであり、他の要因を考えないならば、それぞれのピックアップで受け取ったノイズの電磁波はフロントとリアのピックアップについている巻きの向きが違うそれぞれのコイルにたいして逆向きに誘導電流を生じさせる。
つまりはこういうことだったらしい。
マクスウェル方程式だのまで引っ張り出す必要がなくてホッとしたが、どうも原理とか結果だけ説明されて、分かった気になっても実際の物理現象として何が起こってるかまできちんと想像できるようにしておかないと、このようなふとした疑問からドツボにはまることが多くて大変なのだ。
もう少し利口になりたいものである。
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