スルタイって難しい
MTGAからマジックを始めた初心者にとってスルタイはあこがれのデッキの一つだろう。

右も左も分からない頃に対面すればライフを稼ぎ、ボードを横に広げ、大量の手札を抱えながら相手を圧殺していく様子はまさに王道をいくマジックに見える。

実際、そのデッキパワーの高さから「アベレージで勝ち星を稼ぎたいならスルタイを使え」とプロに評されるほどであるから、少年が街角でショーケースのトランペットを眺めるがごとく、いつかあのデッキを組もうとゴールドを稼ぎ、ワイルドカードを貯め込む日々を送っているのではないかと思う。

あるいは紙媒体で組むには5万近くかかる為に、アリーナ上で組んで回してみようといった中堅どころのプレイヤーもそこそこ多いのではないかと思う。

自分は久しく紙のマジックをプレイしていないおらず、昨年末あたりからMTGAで遊ぶのみとなっているわけだが、とりわけスルタイミッドレンジをプレイするようになったのは最近の二月末のことだ。

つまりは前環境のゴルガリミッドレンジというデッキのノウハウを全く持っていなかった。それがためにGPメンフィス準優勝の完コピをプレイしていても、全くと言っていいほど勝てない日々が続いた。
しばらく%プレイヤーというミシックの浅瀬でぴちゃぴちゃ遊んでいたのだが、このままじゃいかんと思いなおし、完コピのリストを一度諦めて自分の手でスルタイを組んだら上振れのおかげか何とか勝ち上がって行けるようになった。

そうした経験の中でこれはどうも、スルタイ初心者にとって陥りやすい失敗なのではないかと思ったいくつかの発見を今回ここに書いておくことにしよう。


まず、大前提としてスルタイの大会入賞リストはラダー向きではないということ。
スルタイというデッキは、75枚の組み合わせで自分の想定する敵に勝ちやすい構成にまとめられるのがウリであって、あくまで大会のメタ読みやプレイングに自信があるプレイヤーが握るデッキである。
そして、それらの大会のデッキ分布はラダーとは全く違っていて、スルタイミラーや青単との対戦が多いため、本来的にMTGAからマジックに入った初心者が握るような構成になっていないのが普通である。

具体的には《人質取り/Hostage Taker》や《愚蒙の記念像/Memorial to Folly》といったカードは主にスルタイ同型でメインに勝つための工夫であってスルタイミラーの頻度が低いラダーを回す上でメインには全く必要のないパーツだった。

そして、それらのパーツを大量にとったデッキを初心者が回すとそれらの隙をついたような速攻系やそれらが全く刺さらないコントロールデッキと出会って負けるのがMTGAのラダーの好例となっているので胸が痛い。


スルタイ初心者向けの二つ目の着眼は入賞リストのマナベースでも疑えということ。
これは先に挙げた理由と関連しているのだが、大会で想定されているメタは相手が自分の場に干渉する手段が少ないか、またはゲームの進行自体が割合遅めということだ。同型戦での強さを優先するあまり《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》を潰されると緑緑が出ないとか三枚目の土地にアクセスできないみたいな歪なマナベースだと感じるゲームがかなり多い。そしてそれ故に負けることも多い。

このデッキは探検というメカニズムによって中盤以降にも安定して土地を供給されるという期待があるのだが土地の枚数を削っているデッキではその期待に応えて貰えることはほとんどない。
今は《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》4枚+土地24枚が主流となってきているが、個人的には同型《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》先出し連打から《ビビアン・リード/Vivien Reid》というハメパターン以外に4枚目の《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》が必要になるケースはほとんどないと思うし、赤単などを相手にする機会も多いラダーにおいては足を引っ張る存在であることは間違いない。エスパーなどのコントロール相手にも中盤以降は探検でめくって墓地に置かれるだけの存在で、序盤の爆発力という恩恵も対エスパーの戦略ではあまり重要視されるものでもないのではないかと思う。。
自分の対戦経験から言えば《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》と《ビビアン・リード/Vivien Reid》連打から《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》を見つけて叩きつける方が遥かに手軽で確実であった。

そうした経験から得られた結論は、ラダーのスルタイは正統派ミッドレンジへと回帰した方が良いというものだ。
ミッドレンジの正統な闘い方とはつまり早いターンからテンポよくマストカウンターを連打するという戦略である。
(※マストカウンターという用語がまず初心者には不向きかも知れないので補足しておくと、”必ずカウンターしておきたいほどの脅威”という意味で、実際にはカウンターされない《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》などもマスカンと呼ばれることがある)

そういう思想で組んだのが画像のリストとなっている。
(Doneボタンで隠れているのは《廃墟の地/Field of Ruin》である。)
まずメインボードだけでも神話レア13枚、レア23枚(+サイドに4枚)という数字がすでに初心者向けデッキでないのは明らかだが、スルタイとはそういうものなのでそこは既に議論の段階ではない、と言い訳させていただこう。

この構成は同型戦の不利を飲み込んでも《人質取り/Hostage Taker》や《貪欲なチュパカブラ/Ravenous Chupacabra》といったカードをメインに一切採用していないし《ヴラスカの侮辱/Vraska’s Contempt》も一枚に抑えてある。
代わりに《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》と《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》の二枚目と《生体性軟泥/Biogenic Ooze》二枚を採用しているのは、同型でも《生体性軟泥/Biogenic Ooze》で場を止めて《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》を早いターンから探して叩きつけた方が確実に有利を取れるという戦略上の配慮であり、相手の《人質取り/Hostage Taker》をケアしつつ《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》を使わないでも有利な場を構築しやすいというゲームプラン上のメ妥協点が見つかったためである。

そして、その分のスロットはそっくりエスパー相手にも流用できる武器となっている。《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》を対処させているうちに《生体性軟泥/Biogenic Ooze》、《ビビアン・リード/Vivien Reid》、《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》など《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》にも引けを取らないパワーカードで押しつぶせるのはこのリストの利点でもある。

さらに大会入賞リストで大量にとってある《人質取り/Hostage Taker》というカードは白ウィニー系へのキラーカードになりうる一方で、他の探検持ちクリーチャーと一緒に《トカートリの儀仗兵/Tocatli Honor Guard》で止まってしまうという弱点にもなっている。
それでいて、どんなリストをみてもアグロ系へのサイドカードの少なさから抜くに抜けないので、この二面的な危うさをプレイングでカバーする必要があり、ゲームプランは初心者向けの強いカードを連打するという趣旨からはだいぶ逸脱した練り込み具合が要求されていた部分も解消されている。
さらには《生体性軟泥/Biogenic Ooze》によって《一番砦、アダント/Adanto, the First Fort》と同コストでトークンを呼べるため、全体強化で横を抜かれるパターンにも上から被せていけるようになっていて安心である。

色々、長々と語ってきたがまとめると、要は「大会入賞リストはラダーとは違ったメタを想定しているから完コピしてもMTGAじゃ容易に勝ち越せないので、きちんと自分でパーツの作用を理解して組み上げた方が良いよ」というお話でした。

もうすぐに迫ったGP京都では、ちょっとどんなメタになっているか分からないけれど、使い慣れないスルタイを握って落胆しないように誰かの参考になればいいなと思う。

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